第九話

連載

【連載】夢見町の案内人 ― 白藤の残夢 ― 第九話 夏の火の匂い

朝、窓を開けた瞬間、文花は思わず息を止めた。火の匂いがした。近くで何か燃やしているわけではない。煙も見えないし、空も澄んでいる。それなのに、風の奥に、乾いた火の匂いだけが薄く混じっていた。線香とも違う。焚き火とも少し違う。もっと遠くて、もっ...