【夢ことほぎ】髪を切る夢の心理学的意味|由来・背景

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【夢ことほぎ】髪を切る夢の心理学的意味|由来・背景

髪を切る夢が持つ基本的な意味については、こちらの夢占い記事で、長い髪をばっさりショートにする夢についてはこちらの夢占い記事で解説しています。この記事では、なぜ「髪を切る」ことが、力を失うことにも、生まれ変わることにもなりうるのかを、旧約聖書の英雄サムソンの物語から、精神分析と人類学の論争、ジャンヌ・ダルクや明治の女性たちの断髪まで、たどりながら掘り下げてみます。

髪と力の結びつきを語るうえで、よく知られているのが旧約聖書『士師記』のサムソンの物語です。怪力の英雄サムソンは、神に身を捧げた者のしるしとして、生まれてから一度も髪を切らずにいました。ところが、心を許した女性デリラに力の秘密を明かしてしまい、眠っているあいだに七房の髪を剃り落とされると、その力はたちまち失われてしまいます。捕らえられたサムソンでしたが、牢の中で髪が再び伸びはじめると、力も少しずつ戻り、最後には神殿の柱を押し倒したと語られています。

この物語には、髪を切る夢の二つの顔がそのまま表れています。切られることで失われるものがある一方で、髪は時間とともに必ず伸び、力も戻ってくる。髪を切る夢で後悔や不安を感じたとしても、それが永遠の喪失ではないことを、この古い物語は教えてくれているようです。

心理学の世界でも、髪を切ることの意味は長く議論されてきました。イギリスの精神分析家チャールズ・バーグは、1951年の著書『髪の無意識的な意味』の中で、髪を切る行為を、抑え込まれた欲求や生命力を象徴的に断ち切るものとして論じました。この見方に立てば、髪を切る夢は、自分の中の強すぎる衝動や欲求を、自ら抑えようとしている心の動きとして読むことができます。

これに対して、イギリスの人類学者エドマンド・リーチは、1958年の論文「魔術的な髪」の中で、髪型を個人の無意識だけで説明するのではなく、社会の中での立場を示す「しるし」として捉えるべきだと主張しました。世界の多くの文化で、髪を短く切ることや剃ることは、規律や社会の決まりに従うことを、逆に髪を伸ばし放題にすることは、社会の外側に立つことを表してきたというのです。この論争を踏まえると、髪を切る夢は、自分の内側の欲求を整えようとする夢であると同時に、新しい環境や役割に自分をなじませようとする夢でもあると読むことができるでしょう。

歴史をたどると、髪を短く切ることが、社会への挑戦を意味した時代もありました。十五世紀のフランスで祖国を救ったジャンヌ・ダルクは、髪を短く切り、男性の服をまとって戦場に立ちました。のちの異端審問では、この男装が罪状の一つとして問われています。女性が髪を短くすることが、それだけで既存の秩序を揺るがす行為と受け止められていたのです。

日本でも、似たような出来事がありました。明治四年(1871年)に散髪脱刀令が出されると、男性の断髪は文明開化の象徴として広まっていきます。ところが、これにならって髪を短く切る女性が現れると、翌年には東京府が女性の断髪を禁じる布告を出しました。女性が髪を短くすることが、再び広く受け入れられるようになるのは、大正から昭和の初めにかけて、断髪のモダンガールが登場してからのことです。髪を切ってショートにする夢に、しばしば「自分らしく生きたい」「古い枠から抜け出したい」という強い決意が読み取られるのは、こうした歴史の積み重ねとも響き合っています。

そして日本には、髪を切ることが、人生の節目を静かに告げる習わしも残っています。平安時代、出家した女性たちは、髪を肩のあたりで切りそろえる「尼削ぎ」という髪型をしていました。すべてを剃り落とすのではなく、長い髪を肩で切ることで、俗世との区切りを示したのです。大相撲の断髪式も、土俵に生きた日々に感謝を込めて髷を落とす儀式です。髪を切ることは、失うことである前に、これまでの自分に丁寧な区切りをつけるための、大切な儀式でもあったのでしょう。

ここまでの内容をもとにした、夜の理髪店を舞台にした創作ストーリーはこちらの夢物語でお楽しみいただけます。

よくある質問

失恋すると髪を切る、というイメージはいつ頃から広まったのですか?

「失恋したら髪を切る」というイメージがいつから広まったのかは、はっきりとはわかっていません。ただ、髪を切ることを人生の区切りや決意と結びつける考え方は、出家の際の剃髪や尼削ぎ、断髪式など、日本に古くから根づいてきたものです。その延長として、恋の終わりに気持ちを切り替えるための行為として、自然に受け入れられていったのかもしれません。夢占いでも、失恋と髪を切る夢は、再出発のサインとして読まれています。

サムソンの物語のように、髪を切られて力を失う夢は不吉なのでしょうか?

誰かに髪を切られて力が抜けていくような夢は、自分の意思とは関係なく、自信や立場を奪われることへの不安を映していると考えられます。ただ、サムソンの物語でも、髪は再び伸び、力は戻ってきました。夢の中で失ったように感じたものも、時間をかけて取り戻していけるものです。いまは心と体を休め、自分の力を少しずつ蓄え直す時期だと受け止めてみてください。

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