
縁を切る夢が持つ基本的な意味については、こちらの夢占い記事で解説しています。
この記事では、なぜ縁を切る夢が、悲しさと同時に、どこか晴れやかな気持ちを残すことがあるのかを、人と人との結びつきが切れるときの痛みと、そのあとに育つものを見つめた二つの研究と、日本で「縁切り」が担ってきた役割の歴史から、掘り下げてみます。
結びつきが切れるときの痛み
一つ目の視点は、イギリスの精神科医ジョン・ボウルビィです。ボウルビィは、子どもが親などの身近な人と結ぶ心の絆を「愛着」と呼び、人は、安心して戻れる「安全基地」があるからこそ、外の世界へ踏み出していけると考えました。
そして、親から引き離された子どもたちを観察し、はじめは激しく泣いて抗議し、やがて悲しみに沈み、最後には心を閉ざしたように見える段階をたどることを示しました。
人にとって、大切な人との結びつきは、心の土台そのものです。縁を切る場面が、夢の中でもこれほど強く心を揺さぶるのは、そのためなのかもしれません。
別れのあとに育っていくもの
二つ目の視点は、アメリカの心理学者タイ・タシロとパトリシア・フレイジャーです。二人は2003年、最近恋人と別れた大学生たちに、別れを通して自分にどんな変化があったかを尋ねました。
すると、学生たちは、つらい経験であったにもかかわらず、平均して五つほどの前向きな変化を挙げたのです。
自分の気持ちに素直になれた、次の恋で大切にしたいことが分かった、友達との結びつきが深まった。
別れは痛みだけでなく、人を育てるきっかけにもなりうることが示されました。
ボウルビィが「結びつきが切れるときの痛み」に目を向けたのに対して、タシロとフレイジャーは「結びつきが切れたあとに育つもの」に目を向けたといえるでしょう。
悲しみの夢、晴れやかな夢
縁を切る夢で、胸が張り裂けるような悲しみを感じていたなら、あなたの心は、その相手との結びつきを、心の支えとして大切にしているのかもしれません。
縁を切ったあとに晴れやかな気持ちになっていたなら、別れの先にある新しい自分へ、心がすでに歩き出しているのかもしれません。
では、日本の人々は、縁を切ることと、どのように向き合ってきたのでしょうか。
新しい縁への通行手形「三行半」
江戸時代、離婚の際には、夫から妻へ「三行半(みくだりはん)」と呼ばれる離縁状が渡されました。
三行半で書かれることが多かったため、この名で呼ばれています。夫からの一方的な通告のように思われがちですが、離縁状は、妻が次の人と再婚してもよいことを認める証明書の役割も果たしていました。
縁を切る書状は、同時に、新しい縁へと進むための大切な通行手形でもあったのです。
女性たちを守った縁切寺
一方、妻のほうから離縁を望んでも、夫が離縁状を書いてくれないこともありました。そんな女性たちの駆けこみ先となったのが、幕府に認められた縁切寺、鎌倉の東慶寺と、上野国(いまの群馬県)の満徳寺です。
寺に駆けこんだ女性は、寺の取り計らいで夫との話し合いが進められ、それでもまとまらなければ、寺で一定の期間を過ごすことで、離縁が認められました。
縁切榎と、縁を切って結ぶ石碑
縁切りの言い伝えは、町の中にも残っています。中山道の板橋宿にあった「縁切榎」は、その下を通ると縁が切れるといわれ、嫁入りの行列は、この木の前を避けて通ったと伝えられています。
また、京都の安井金比羅宮には、石碑の穴を表から裏へくぐって悪い縁を切り、裏から表へくぐって良い縁を結ぶという、珍しいお参りの作法が伝わっています。
縁を切ることと結ぶことは、昔から、一つながりのものと考えられてきたのです。
結びつきが切れるときの痛みと、そのあとに育っていくもの。再婚を認める証しでもあった離縁状と、女性たちを守った縁切寺。そして、くぐる向きで、切ることも結ぶこともできる石碑。縁を切る夢は、あなたがいま、何を手放し、その先にどんな新しい縁を結びたいと願っているのかを、そっと問いかけているのかもしれません。
ここまでの内容をもとにした、夢の意味をたどる創作ストーリーは、こちらの夢物語でお楽しみいただけます。
よくある質問
縁を切る夢を見て、目が覚めたあとも悲しさが残っていました。
目が覚めても悲しさが残っているのは、夢の中で縁を切った相手との結びつきが、あなたにとって大切な心の支えになっていることの表れと読むことができます。
ボウルビィが示したように、人と人との絆は、心の土台そのものです。その悲しさを打ち消そうとせず、相手への思いを確かめる機会として受け止めてみてください。
関係を大切にするために、いまできることが見えてくるはずです。
縁を切る夢のあと、なぜか心が軽くなっていました。
縁を切る夢のあとに心が軽くなっていたなら、重荷になっていた関係や、古い自分のあり方から、心が一歩離れはじめているサインと読むことができます。
タシロとフレイジャーの研究が示すように、別れや区切りの先には、新しい自分が育っていくものです。
その軽さを大切にしながら、これから結びたい縁や、始めてみたいことを、一つ思い浮かべてみてください。

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