
勧誘の夢が持つ基本的な意味については、こちらの夢占い記事で解説しています。
この記事では、なぜ勧誘の夢が、断りたい気持ちと、つい引きこまれてしまう気持ちのあいだで揺れる心を映すのかを、人が誘いに応じてしまう心の仕組みを見つめた二つの研究と、人を誘い、信頼を築いてきた日本の商いの歴史から、掘り下げてみます。
親切にされると、断りにくくなる
一つ目の視点は、アメリカの心理学者デニス・リーガンです。リーガンは1971年、参加者に、美術の鑑賞の実験だと伝えて、もう一人の参加者と一緒に絵を評価してもらいました。
実は、そのもう一人は実験の協力者で、休憩のあいだに、ある参加者には、頼まれてもいないのに飲み物を買ってきてあげました。
実験のあとで、その協力者が、くじ引きの券を買ってほしいと頼むと、飲み物をもらっていた参加者は、もらっていない参加者のおよそ二倍もの券を買ったのです。
人は、何かをしてもらうと、お返しをしなければという気持ちになる。これは「返報性」と呼ばれる心の働きで、勧誘の場面でも、よく使われています。
みんなと同じ答えを選んでしまう心
二つ目の視点は、アメリカの心理学者ソロモン・アッシュです。アッシュは1951年、参加者に、線の長さを見比べるという、とても簡単な問題を出しました。
ところが、同じ部屋にいた他の参加者たちは、実はみな協力者で、わざと、そろって間違った答えを口にしたのです。
すると、本物の参加者の多くが、少なくとも一度は、周りに合わせて、明らかに間違った答えを選んでしまいました。
人は、周りのみんなが同じことを言うと、自分の判断より、周りに合わせたくなるものなのです。
けれど、アッシュの実験には、心強い続きもあります。周りの協力者の中に、たった一人でも、正しい答えを言う人がいると、本物の参加者が周りに合わせてしまう割合は、大きく下がったのです。
一人でも味方がいれば、人は、自分の判断を信じられるようになります。断りにくい誘いに迷ったときは、信頼できる誰かに相談してみることが、自分の気持ちを守る、何よりの力になるのかもしれません。
リーガンが「何かをもらうと、お返しをしたくなる心」に目を向けたのに対して、アッシュは「周りに合わせたくなる心」に目を向けたといえるでしょう。
恩を感じる夢、周りに流される夢
勧誘の夢で、相手に親切にされたあと、断りにくくなっていたなら、あなたの心は、恩を返さなければという気持ちに、しばられているのかもしれません。
周りの人がみんな誘いに乗っていて、自分だけ断れなかったなら、周りに合わせなければという気持ちが、いま強くなっているのかもしれません。
では、日本の人々は、人を誘い、信頼を築くことに、どのように向き合ってきたのでしょうか。
まず役に立つ「先用後利」
江戸時代から続く「富山の薬売り」は、日本ならではの商いとして知られています。薬売りたちは、全国の家々を訪ね、薬の入った箱を置いていきました。
家の人は、使った分の代金だけを、次に薬売りが訪ねてきたときに払えばよいのです。この仕組みは「先用後利」、つまり、まず使ってもらい、利益はあとからいただく、という考え方にもとづいていました。
強引に売りつけるのではなく、まず相手の役に立ち、信頼を積み重ねる。薬売りたちは、紙風船などのおまけを子どもたちに配りながら、何代にもわたって、家々とのつながりを育てていったのです。
三顧の礼と、人を誘うということ
『三国志』の劉備が、諸葛亮を三度訪ねて迎えた「三顧の礼」のように、人を誘うということは、本来、相手を尊重し、心を尽くすことでもありました。誘う側にも、誘われる側にも、誠実さが求められるのは、昔もいまも変わらないのでしょう。
何かをもらうとお返しをしたくなる心と、周りに合わせたくなる心。まず相手の役に立つことから始めた置き薬の商いと、三度足を運んで人を迎えた礼。勧誘の夢は、あなたがいま、誰のどんな誘いに心を揺らしていて、そして、自分の意思で何を選びたいのかを、そっと問いかけているのかもしれません。
ここまでの内容をもとにした創作ストーリーは、こちらの夢物語でお楽しみいただけます。
よくある質問
勧誘の夢で、親切にされたあとに断れなくなっていました。
親切にされたあとに断れなくなる夢は、恩を返さなければという気持ちが、あなたの心を強くしばっていることの表れと読むことができます。
リーガンの研究が示すように、何かをしてもらうと、お返しをしたくなるのは自然な心の働きです。
けれど、本当に感謝を返す方法は、相手の頼みを何でも引き受けることだけではありません。自分の気持ちも、大切にしてください。
夢の中で、みんなが誘いに乗るので、自分も断れませんでした。
周りがみんな誘いに乗るので断れなかった夢は、周りに合わせなければという気持ちが、いまのあなたの中で大きくなっていることの表れと読むことができます。
アッシュの実験が示すように、人は、周りと同じ答えを選びたくなるものです。小さな場面からでよいので、自分はどう思うかを、まず心の中で確かめる習慣をつけてみてください。

コメント