【夢ことほぎ】選ばれる夢の心理学的意味|由来・背景

この記事は約4分で読めます。
【夢ことほぎ】選ばれる夢の心理学的意味|由来・背景

選ばれる夢が持つ基本的な意味については、こちらの夢占い記事で解説しています。

この記事では、なぜ選ばれることが、夢の中で「認められる喜び」と「期待の重さ」の両方を映すのかを、人が認められることをどう求めるかを見つめた二人の心理学者の視点、世界の神話に共通する「選ばれた者」の物語、そして日本で神に仕える人を選んできた歴史から、掘り下げてみます。

認められたいという欲求

一つ目の視点は、アメリカの心理学者アブラハム・マズローです。マズローは、人の欲求には段階があり、生きるための基本的な欲求が満たされると、やがて人は、周りから認められ、尊重されたいという「承認の欲求」を強く抱くようになると考えました。

選ばれることは、この欲求がもっとも分かりやすく満たされる瞬間です。だからこそ、選ばれる夢を見たとき、私たちの心は大きく高鳴ります。

そのままの自分を受け入れられること

二つ目の視点は、同じくアメリカの心理学者カール・ロジャーズです。

ロジャーズは、多くの人と向き合うカウンセリングの経験から、人が健やかに成長していくためには、何かができたから認められるのではなく、ありのままの存在として受け入れられる体験が欠かせないと考えました。

ロジャーズはこれを「無条件の肯定的配慮」と呼びました。条件つきでしか認められない環境で育つと、人は、選ばれる自分でいなければ価値がないと思いこみ、本当の自分の気持ちから離れていってしまうというのです。

マズローが「認められたい」という欲求の大切さに目を向けたのに対して、ロジャーズは、その欲求の根っこにある「そのままの自分を受け入れてほしい」という願いに目を向けたといえるでしょう。

選ばれる夢で、うれしさと一緒にどこか息苦しさが残っていたなら、あなたの心は、選ばれることよりも、選ばれなくても大丈夫だと思える安心を、求めているのかもしれません。

英雄を呼ぶ「冒険への召命」

選ばれることは、世界中の神話や物語の中心にも置かれてきました。アメリカの神話学者ジョーゼフ・キャンベルは、1949年に著した『千の顔をもつ英雄』の中で、世界各地の英雄の物語には共通する型があると論じました。

その始まりにあるのが、ふつうの暮らしを送っていた主人公のもとに、思いがけず使命が訪れる「冒険への召命」です。

興味深いのは、多くの物語で、主人公が最初はその召命を拒もうとすることです。キャンベルはこれを「召命の拒否」と呼びました。

選ばれることは、喜びであると同時に、これまでの暮らしを手放す怖さをともなうものだったのです。

選ばれて戸惑う夢は、まさにこの、物語の始まりに立つ主人公の心と重なります。

占いで選ばれた伊勢の斎王

日本では、神に仕える人を選ぶとき、人の思惑ではなく、占いによって神意をうかがってきました。

天皇が即位するたびに、未婚の皇族の女性の中から一人が選ばれ、伊勢神宮に仕える「斎王」となりました。

その選び方は「卜定(ぼくじょう)」と呼ばれ、亀の甲羅を焼いてできたひびの形から神の意思を読み取る占いによって決められたといわれています。

選ばれた斎王は、都を離れ、伊勢の斎宮で長い年月を過ごしました。名誉ある役目であると同時に、それは、家族や都の暮らしと別れる、大きな決断でもあったのです。

「白羽の矢が立つ」の由来

また、多くの中から選ばれることを表す「白羽の矢が立つ」という言葉は、神が生け贄として望む娘の家に白い羽根の矢を立てたという言い伝えに由来するとされます。日本の古い言葉にも、選ばれることの光と影が、そのまま刻まれているのです。

認められたい欲求と、そのままで受け入れられたい願い。召命を前にためらう英雄の心。そして、神意によって選ばれ、新しい暮らしへ旅立った人々の歴史。選ばれる夢は、あなたがいま、誰に、何のために選ばれたいのかを、そっと問いかけているのかもしれません。

ここまでの内容をもとにした、SF仕立ての創作ストーリーは、こちらの夢物語でお楽しみいただけます。

よくある質問

選ばれたいと強く願うのは、よくないことなのでしょうか?

マズローの考え方に立てば、認められたいと願うのは、人として自然で健やかな欲求です。大切なのは、その願いが、自分を追いつめるほど強くなっていないかどうかです。

選ばれることでしか自分の価値を感じられないときは、ロジャーズのいう「ありのままを受け入れられる体験」が足りていないのかもしれません。

信頼できる人と過ごす時間や、自分で自分をねぎらう時間を、意識してつくってみてください。

選ばれたのに逃げ出したくなる夢を見ました。

選ばれたのに逃げ出したくなる夢は、キャンベルのいう「召命の拒否」に重なります。新しい役割を前に、これまでの暮らしを手放すことへの怖さが表れているのでしょう。

英雄の物語では、ためらいのあとに、助けてくれる存在が現れ、主人公は少しずつ一歩を踏み出していきます。

いまは無理に決断を急がず、信頼できる人に、迷っている気持ちをそのまま話してみることから始めてみてください。

タイトルとURLをコピーしました