連載 【連載】夢見町の案内人 ― 白藤の残夢 ― 第六話 欠けた夢日記 朝、目を開けたとき、最初に視界へ入ってきたのは、膝の上のノートだった。昨夜、古い箱の底から見つけて、布団に持ち込んだまま眠ってしまったらしい。薄いクリーム色の表紙はすっかり褪せ、角は丸く擦り切れている。端のほうにだけ、白藤の花房に似た淡い模... 2026.06.07 夢物語夢見町の案内人連載
連載 【連載】夢見町の案内人 ― 白藤の残夢 ―第四話 白藤写真館 朝の机の上に、昨夜拾った写真片が置かれていた。夢の中のものは、目が覚めればたいてい輪郭を失う。なのに、それは薄い朝の光の中でちゃんと紙の重さを持っていて、かえって現実のほうが少し頼りなく思えた。文花は指先でその縁をなぞった。古い写真独特の、... 2026.05.24 夢物語夢見町の案内人連載
連載 【連載】夢見町の案内人 ― 白藤の残夢 ― 第三話 水鏡橋の夢 朝、目を覚ましたとき、喉の奥にまだ水の冷たさが残っていた。部屋はもう明るくなっていて、障子の向こうでは鳥の声までしているのに、わたしの中だけが薄い水底に沈んだままみたいだった。夢の景色ははっきり思い出せない。ただ、古い橋の欄干と、黒い水のゆ... 2026.05.17 夢物語夢見町の案内人連載
連載 【連載】夢見町の案内人― 白藤の残夢 ― 第二話 Golden Anima の灯 翌日の午後になっても、あの言葉は胸の奥に残っていた。――まだ、わたしは帰れていない。朝、目を覚ましたときには夢の輪郭はもう薄れていたのに、その一文だけは、水に濡れた紙みたいにぴたりと心に貼りついて、離れなかった。台所で母が味噌汁をよそってい... 2026.05.10 夢物語夢見町の案内人連載
連載 【連載】夢見町の案内人 ― 白藤の残夢 ― 第一話 宵待駅の黒猫 帰ってきた、と思うには、宵待町は少し静かすぎた。電車が駅へ滑り込むあいだ、わたしは窓に映る自分の顔をぼんやり見ていた。東京を出る朝には、もう少し肩の力が抜けるのかと思っていた。けれど実際はそんなこともなく、スマホの通知を開く気にもなれないま... 2026.05.03 夢物語夢見町の案内人連載