夢物語

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【夢物語】さかさまの言葉|彼女と喧嘩する夢

「もう知らない!」彼女の声が、部屋の空気を切り裂いた。約束していた記念日を、僕がうっかり忘れていたことがきっかけだった。売り言葉に買い言葉で、気づけば互いに、言わなくてもいいことまで口にしていた。「そういうところ、本当に無神経だと思う」彼女...
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【夢物語】ぬりかべ左官|壁の夢

えー、「壁に耳あり障子に目あり」なんてことを申します。どこで誰が聞いているかわからねえから、うかつなことは言うもんじゃない、という戒めでございますが、これがまた、うかつな奴に限ってよく喋る。神田の長屋に、熊五郎という左官がおりまして。壁を塗...
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【夢物語】三時十二分|地震の夢

天井の照明がゆっくりと円を描いていた。拓海は布団の上で体を起こした。床がきしみ、窓ガラスがかたかたと鳴っている。揺れは横から押し寄せ、壁の時計が傾いた。逃げなければ。そう思って玄関へ向かうが、靴がない。暗い廊下を何度往復しても、靴だけが見つ...
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【夢物語】浜鳴駅まで|誘拐される夢

三日続けて、同じ男にさらわれた。一日目の夢で、真壁は会社の駐車場にいた。夜の十時を過ぎていて、事務所の窓にはまだ明かりがついている。鍵を探してポケットに手を入れたとき、後ろから肩をつかまれた。振り向く間もなく灰色の車の後部座席に押しこまれ、...
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【夢物語】金曜日の白いミニバン|飲酒運転の夢

海沿いの県道を、白いミニバンで走っていた。右手に黒い海が広がり、街灯がひとつずつ後ろへ流れていく。運転は嫌いじゃない。いつもの道だ。信号で止まったとき、ふと自分の息が甘いことに気づいた。日本酒の匂いだった。いつ飲んだのか思い出せない。けれど...
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【夢物語】屋上の巣箱に告げる|蜂の夢

夜のオフィスに、律子はひとりで座っていた。蛍光灯は半分消えていて、窓の外には向かいのビルの非常灯だけが緑色に光っている。耳のすぐそばで、低い羽音がした。振り向くと何もいない。けれど音はやまない。キーボードの上を、一匹の蜂が歩いていた。細い脚...
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【夢物語】虫送りの夜に|気持ち悪い虫の夢

夢の中で、美緒は、畑の真ん中にしゃがみこんでいた。足もとの土が、もぞもぞと動いている。黒い粒のようなものが、次々と這い出してきて、長靴を越え、膝を越え、腕へとのぼってくる。払っても、払っても、虫は減らない。それどころか、払うたびに数が増えて...
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【夢物語】すれ違う人の顔|逆走の夢

夢の中で、菜摘は、夜の高速道路を走っていた。前から、まぶしいヘッドライトが、次々と迫ってくる。鳴りやまないクラクション。そこでようやく、自分だけが、逆向きに走っていることに気づいた。出口を探しても、標識はどれも、見たことのない地名ばかりだ。...
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【夢物語】旅支度の手|棺桶の夢

夢の中で、私は、白い棺桶の中に横たわっていた。ふたは開いていて、四角く切り取られた天井が見える。不思議と、怖くはなかった。木の香りがして、体の下の布がやわらかい。どこか遠くで、母が私の名前を呼んでいる。透子、透子。返事をしようとしたけれど、...
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【夢物語】袋の外からの手紙|カンガルーの夢

四月十日 母より拓海へブリスベンには、無事に着きましたか。空港で手を振ったあなたの背中が、まだ目に焼きついています。向こうは、いまは秋なのよね。朝晩は冷えるでしょうから、持たせた紺のセーターを、ちゃんと着てください。生水は飲まないこと。夜道...
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【夢物語】三つの名前を持つ猫|かわいがる夢

夢の中で、私は灰色の猫をなでていた。指を沈めると、やわらかな毛並みの奥から、温かな体温が伝わってくる。猫は、喉をごろごろと鳴らして、私の手のひらに頭をこすりつけた。ふいに、猫が立ち上がった。そして、長い廊下を、しっぽを揺らしながら歩いていく...
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【夢物語】霞堤のむこう|川が氾濫する夢

夢の中で、私は、子どものころに暮らした家の前に立っていた。家の裏を流れる川が、低い音を立てて、ふくれあがっている。茶色く濁った水が、岸の土をえぐり、少しずつ、少しずつ、こちらへ近づいてくる。私は、土のうを積んでいた。一つ積んでは、また一つ。...
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【夢物語】川べりの遊び娘|カワウソの夢

夢の中で、わたしは、知らない川のほとりに座っていた。水面から、一匹のカワウソが、ひょっこりと顔を出した。カワウソは、平たい小石を前足で器用に転がしてみせると、わたしのほうを見て、まるで「いっしょに遊ぼう」と言うように、首をかしげた。わたしが...
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【夢物語】背守りの糸|着物の夢

夢の中で、お糸は、美しい着物を着て、大きな橋を渡っていた。すれ違う人たちが、みな、ぎょっとしたように目をそらす。不思議に思って胸元を見下ろすと、衿が、左前に合わさっていた。死んだ人の着方だ。直そうとしても、指がこわばって動かない。橋の向こう...
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【夢物語】ねばならない部屋|監禁される夢

目を開けると、私は、真っ白な部屋の中にいた。壁も、床も、天井も、どこまでも白い。窓はなく、扉もない。部屋の真ん中に、古びた机が一つと、その上に、一冊の黒い手帳が置かれているだけだった。壁を叩いてみる。こん、こん、と、硬い音が返ってくるだけだ...
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【夢物語】屋根裏の鍵|監禁の夢

夢の中で、私は、屋根裏部屋の扉に鍵をかけていた。古い真鍮の鍵を回すと、かちり、と重い音がした。扉の向こうで、誰かが小さく扉を叩いている。とん、とん、とん。弱々しい音だった。「ここにいれば、安全だから」私は、扉に向かってそう言った。自分の声と...
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【夢物語】途中式の行方|カンニングの夢

夢の中で、僕は、答案用紙の上に、こっそり小さな紙切れを広げていた。びっしりと書きこまれた公式と答え。周りに気づかれないように、ちらり、ちらりと目を落とす。答えを写すたびに、心臓の音が、教室じゅうに響いているような気がした。「陽向」顔を上げる...
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【夢物語】三十四番目の岩屋|観音様の夢

夢の中で、私は、薄暗いお堂の前に座っていた。お堂の奥に、たくさんの手を持つ観音様が立っていた。その手の一つが、ゆっくりと、私のほうへ伸びてくる。私は、その手を取ろうとした。けれど、どうしても、腕が上がらなかった。伸ばされた手は、私の目の前で...
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【夢物語】放り上げる腕|空を飛ぶ夢

子どものころ、千秋はよく空を飛ぶ夢を見た。団地の四階のベランダから、洗濯物のあいだをくぐって外へ出る。つま先で手すりを軽くけると、体はふわりと浮かび、給水塔のてっぺんをかすめて、商店街のアーケードの上を越えていく。夢の中の千秋は、飛び方を誰...
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【夢物語】断ってもいい部室|勧誘の夢

夢の中で、僕は、大学の広場の真ん中に立っていた。四方八方から、ビラを持った先輩たちが押し寄せてくる。「テニスサークル、どう?」「名前だけでいいから!」「見学、見学だけ!」断ろうと口を開くたびに、手の中に入部届が増えていく。気づけば、僕は、両...