夢物語

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【夢物語】踊り場で待ち合わせ|エスカレーターの夢

夢の中の私は、駅の長いエスカレーターに乗っていた。上りのエスカレーター。手すりのゴムが、少しだけ温かい。隣の下りのエスカレーターに、見覚えのある背中が見えた。紺色のコート。少しだけ寝ぐせのついた髪。朔くんだった。「朔くん」呼びかけると、朔く...
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【夢物語】名前のない同居人|得体の知れない生物の夢

夢の中の僕は、夜の学校の廊下を走っていた。背後から、何かがついてくる。ぺた、ぺた、と湿った足音。振り返ると、廊下の暗がりに、黒い影のようなものがうずくまっていた。形は、はっきりしない。丸いようで、とがっているようでもある。目のようなものが、...
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【夢物語】ぬか袋のぬくもり|エステの夢

夢の中の私は、真っ白なエステサロンのベッドに横たわっていた。天井には柔らかな照明。どこからか、ラベンダーの香りが漂ってくる。「では、お顔のお手入れを始めますね」エステティシャンの女性が、私の顔にそっと手を伸ばした。けれど、その指が触れたのは...
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【夢物語】いいねの代わりに|SNSの夢

夢の中の私は、真っ暗な部屋で、スマホの画面だけを見つめていた。さっき投稿したばかりの写真が、タイムラインの一番上に表示されている。会社帰りの歩道橋から撮った、オレンジ色の夕焼けだった。一分たっても、五分たっても、ハートのマークは灰色のままだ...
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【夢物語】枝折りの森|枝の夢

気がつくと、私は深い森の入り口に立っていた。見上げるほど大きな木が一本、森の真ん中にそびえている。太い幹から、数えきれないほどの枝が四方へ伸び、その一本一本の先が、霧の向こうへ消えていた。「迷われましたか」声のした方を振り向くと、白い着物の...
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【夢物語】猫と年越しの番|干支の夢

大みそかの夜、こたつでうたた寝をした私は、夢の中で、囲炉裏のある古い家にいた。ぱちぱちと薪のはぜる音。向かいには、見知らぬおばあさんが座っていて、膝の上では、三毛猫が丸くなっていた。「眠れないのかい。それなら、ひとつ昔話をしてあげようね」お...
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【夢物語】目が覚めたら海老だった件について|海老の夢

結論から言うと、私は海老になっていた。いや、正確には「夢の中で」だ。それはわかっている。わかっているけれど、目の前で揺れている二本の長いひげが、どう考えても自分の顔から生えているのは、さすがに受け入れがたい。「……え、待って。なにこれ」声を...
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【夢物語】灰色都市の未登録色|絵の具の夢

西暦二一八七年。凪市(なぎし)の朝は、今日も灰色だった。建物の壁も、道路も、人々の服も、すべては色彩管理局が定めた「標準灰色」の十二段階のどれかで塗られている。色は、人の心を乱し、争いのもとになる。百年前にそう決められてから、この街では、許...
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【夢物語】まっさらな看板|看板の夢

夢の中で、おれは、真っ白な大きな看板の前に立っていた。手には、使い慣れた平筆。ペンキの缶も、足もとにちゃんとそろっている。それなのに、何を書けばいいのか、さっぱり分からなかった。筆を持ち上げては、また下ろす。看板は、いつまでたっても、まっさ...
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【夢物語】結び目|エプロンの夢

台所の窓から、夕方の光が斜めに入っていた。母が流しの前に立っている。背中を向けたまま、腰のうしろでエプロンのひもを結んでいた。指先が、慣れた動きで蝶の形をつくる。けれど、結び目は少しゆるくて、母が鍋に手を伸ばすたびに、ひもの端がふらりと揺れ...
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【夢物語】北北西|恵方巻の夢

夢の中で、知世は母と並んで座っていた。居間の座卓。卓の上には、海苔の黒い一本がふたつ。母は何も言わずに、片方を両手で持ち上げた。そして、少しだけ体をずらして、知世とは違う方角を向いた。知世も、自分の一本を持った。どちらを向けばいいのか、わか...
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【夢物語】十二時の重さ|かぼちゃの夢

気づけば私は、橙色の灯りが連なる夜の通りに立っていた。道の両側に、顔をくり抜いたかぼちゃのランタンがずらりと並んでいる。三角の目、ぎざぎざの口。その奥で揺れる炎が、石畳を温かく照らしていた。ハロウィンの夜の市場らしい。通りの真ん中に、金色の...
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【夢物語】刈り残し|鎌の夢

ざくり、という音で、私はその夢に入る。夕暮れの田んぼだった。どこまでも続く黄金色の稲穂が、風もないのに、さわさわと揺れている。空は熟れすぎた柿のような色で、太陽はいつまでも沈まない。ずっと遠く、田んぼの端に、誰かが立っていた。腰をかがめ、手...
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【夢物語】わたしの形代|紙の夢

最初に気づいたのは、机の上の一枚の白い紙だった。夢の中の私の部屋は、現実とそっくり同じだった。ベッドの位置も、窓辺の観葉植物も、読みかけの文庫本も。ただ、机の上に、見覚えのない白い紙が一枚、きちんと置かれていた。指で触れた瞬間、紙の上に、じ...
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【夢物語】あまがみ|噛まれる夢

最初の夜、その犬はとても小さかった。アパートの廊下の突き当たり、電気の消えた暗がりに、白い子犬がちょこんと座っていた。尻尾をぱたぱたと振って、私を見上げている。しゃがんで手を差し出すと、子犬は私の指先をぺろりと舐めて、それから、はむ、と甘噛...
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【夢物語】雲と書く|神棚の夢

その神棚は、祖母の家から持ってきたものだった。祖母が叔母の家で暮らすことになり、長く住んだ家を片づけたとき、「あんたが持っていきなさい」と手渡された、小さな三社造りの神棚。東京のアパートに越してきて半年、私はそれを本棚の上に置いたまま、一度...
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【夢物語】肩で切りそろえる|髪を切る夢

気づけば私は、古い理髪店の椅子に座っていた。夜の店内には、ほかに客はいなかった。革張りの椅子はところどころすり切れていて、壁の時計はこちこちと遅れた音を刻んでいる。窓の外では、赤と白のサインポールが、ゆっくりと回り続けていた。「いらっしゃい...
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【夢物語】オッカムの剃刀|カミソリの夢

霧の深い夜だった。気づけば私は、古びた洋館のロビーに立っていた。赤い絨毯、止まったままの柱時計、階段の上から垂れ下がる、埃をかぶったシャンデリア。暖炉の前の椅子に、黒いコートの男が一人、足を組んで座っていた。ネクタイピンは、小さな銀色のカミ...
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【夢物語】鴨葱道中記|鴨の夢

(パン、パン)さて、ここに一席、申し上げまするは、ある晩、一人の娘が見た、夢の中の道中記でございます。娘の名は、仮にお葉(よう)と申しておきましょう。これがまあ、気立てはよいが、人の頼みを断れぬ。店先で「お似合いですよ」と言われれば財布の紐...
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【夢物語】伝えそびれた色|カメレオンの夢

気づけば私は、ガラス張りの温室の中を歩いていた。湿った空気に、土と葉の匂いが満ちている。背の高いシダの葉のあいだから、やわらかな光が差し込んでいた。ふと肩が重くなって横を見ると、一匹のカメレオンがちょこんと乗っていた。緑色の体。くるりと巻い...