夢物語

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【夢物語】虫のいない密室|痒い夢

その痒みは、決まって夜の十一時に始まった。夢の中の私は、窓のない小さな部屋にいた。白い壁、白い天井、ベッドが一つ。扉には内側から鍵がかかっていて、隙間という隙間には、目張りのテープがきっちりと貼られている。完全な密室だった。それなのに、右の...
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【夢物語】都鳥に言問う|カモメの夢

気づけば私は、夕暮れの川べりに立っていた。広い川面が、茜色の空を映してゆっくりと流れている。対岸には、見覚えのない古い町並み。空を見上げると、白い鳥たちが、夕日に翼を透かしながら舞っていた。一羽が、すうっと降りてきて、私の足元の杭にとまった...
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【夢物語】小紋の町|柄の夢

気づけば私は、見知らぬ古い町の通りを歩いていた。石畳の両側に、低い瓦屋根の家が並んでいる。行き交う人たちは、みな着物姿だった。けれど不思議なことに、誰の着物も、茶色や鼠色の、無地のように見えるものばかり。通り全体が、秋の枯れ葉のような、落ち...
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【夢物語】器の内側|空っぽの夢

三年一緒に暮らした美紀が引っ越していった日の夜、私はその夢を見た。夢の中の私は、がらんとした部屋に立っていた。美紀のベッドがあった場所には、床の色の違う四角い跡だけが残っている。二人で選んだソファも、壁に貼っていた旅行の写真も、何もない。窓...
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【夢物語】七味の配合|辛い食べ物の夢

気づけば私は、赤い暖簾の下がった小さな店の前に立っていた。暖簾には、筆文字で「やげん堀」と書かれている。中をのぞくと、木の棚に、赤や黒や茶色の粉が入った壺がずらりと並び、鼻の奥をくすぐるような、ぴりっとした香りが漂っていた。「いらっしゃい。...
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【夢物語】デュエットの続き|カラオケの夢

薄暗い部屋に、ミラーボールの光がくるくると回っていた。夢の中の私は、カラオケボックスのソファに座っていた。隣には、大学のサークルの一つ上の先輩、陽介さんがいる。二人きりだった。テーブルの上には、汗をかいたウーロン茶のグラスが二つ。画面に、曲...
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【夢物語】返しそびれた傘|借りる夢

その夢の中では、いつも雨が降っていた。会社のビルのエントランス。ガラスの向こうは、白く煙るような土砂降りだった。傘を持っていない私は、自動ドアの前で立ち尽くしている。「これ、使ってください」振り向くと、隣の部署の相沢さんが、紺色の傘を差し出...
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【夢物語】味がなくなるまで|ガムの夢

(舞台に、二人の芸人が駆け込んでくる)ソーダ「どうもー、チューイングです! よろしくお願いしますー!」ミント「お願いしますー。いやあ、ソーダくん、ちょっと聞いてほしいんやけどな」ソーダ「どないしたん」ミント「ゆうべ、めっちゃ変な夢見てん。口...
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【夢物語】冬告げの騎士|カメムシの夢

コツ、コツ、と窓を叩く音で、私はその夢に入った。夜のアパートの部屋だった。窓の外は、晩秋の冷たい風。カーテンを開けると、ガラスの向こうに、親指ほどの大きさの何かが立っていた。緑色の、丸みを帯びた甲冑。背中には、亀の甲羅のような盾。細い触角を...
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【夢物語】羽音の言い訳|蚊の夢

深夜、耳元で「プーン」という羽音がした瞬間、僕は覚悟を決めて布団から飛び起きた。豆電球の薄明かりの中、目を凝らすと小さな蚊が一匹、行儀よく正座するように宙に浮いている。「すみません、少々よろしいでしょうか」蚊が喋った。しかも敬語で。僕は枕を...
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【夢物語】あなたが見たい、わたし|彼女の夢

Aの夢を見るのは、これで七日連続だった。最初は嬉しかった。毎晩、彼女に会える。笑った顔も、拗ねた顔も、いつもと同じように優しい。ただ一つだけ、少しずつ気になり始めたことがあった。彼女は、毎晩ほんの少しずつ、何かが違う。三日目の夜、彼女は僕の...
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【夢物語】胸に乗っていたもの|金縛りの夢

夜中に、ふっと目が覚めた。部屋は静かで、カーテンの隙間から、街灯の光が一筋だけ差し込んでいる。いつもの寝室のはずなのに、体だけがどこか遠くに置き去りにされたみたいに、指先ひとつ動かせなかった。声を出そうとしても、喉の奥で息が固まる。心臓だけ...
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【夢物語】遅れてくれた道連れ|亀の夢

約束の時間に遅れそうで、私は浜辺の道を急いでいた。潮の匂いが強くなるほど焦りも増していく。走りたいのに、足元は柔らかい砂に取られて、思うように進めない。腕時計を確認するたび、針は容赦なく進んでいるように見えた。そのとき、進行方向の真ん中に、...
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【夢物語】稲妻が並べたもの|雷の夢

夜、机に向かったまま、いつの間にか眠っていたらしい。気づくと、私は見知らぬ丘の上に立っていた。低く垂れこめた雲が、地平線までずっと続いている。もう何日も、答えの出ない問いを抱えたままだった。進むべきか、留まるべきか。決めなければいけないと分...
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【夢物語】狐火の道|狐の夢

気づくと、見慣れない夜道を歩いていた。久しぶりに会う約束をしていた人がいて、その時間に遅れそうで、息が切れていた。いつもの近道のはずなのに、街灯もまばらな、田んぼのあぜ道のような小道に迷い込んでいる。土と夜露のにおいが、やけに生々しく鼻をか...
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【夢物語】雨上がりに、届くもの|虹の夢

深夜、目が覚める少し前の夢は、ずっと降り続く雨の中にいた。隣にいたはずの誰かは、気づけばずっと遠くにいて、私の傘の内側には入ってこようとしない。声をかけようとしても、雨音にかき消されて、言葉がちゃんと届いている気がしなかった。 いつからだろ...
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【夢物語】鏡の中の、まばたき|鏡の夢

祖母の部屋の隅に、古い姿見があった。 金の縁飾りは所々くすみ、ガラスの端には細かな傷が走っている。子どものころから、なんとなく近づきたくない鏡だった。 なのに夢の中の私は、吸い寄せられるように、その前に立っていた。 最近の私は、鏡を見るとき...
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【夢物語】龍が守っていたもの|龍・ドラゴンの夢

深い霧の底を、ひとりで歩いていた。足もとの感触だけが頼りで、視界は乳白色に閉ざされている。どこか遠くで、ひくく低い息づかいのようなものが響いていた。獣のものにしては大きすぎる、山そのものが呼吸しているような音。私は、その音に導かれるようにゆ...
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【連載】夢見町の案内人 ― 白藤の残夢 第十二話 白藤の残夢

その朝、文花はひどく深く眠ったあとで目を覚ました。夢を見ていた気もする。けれど、目が覚めたときには輪郭だけがほどけていて、何があったのかは思い出せなかった。ただ、眠る前まで胸の奥にあった硬さだけが、夜のあいだに少しずつほどけていったことはわ...
連載

【連載】夢見町の案内人 ― 白藤の残夢 第十一話 名前を呼ぶ夜

その夜、文花はうまく眠れなかった。灯りを消した部屋のなかで、昼間よりもむしろはっきりと、あの声だけが残っていた。――お帰りなさい。たったひとことなのに、胸の奥へ薄い栞みたいに差しこまれたまま、静かに居場所をつくっている。枕元のノートへ手をの...