
(舞台に、二人の芸人が駆け込んでくる)
ソーダ「どうもー、チューイングです! よろしくお願いしますー!」
ミント「お願いしますー。いやあ、ソーダくん、ちょっと聞いてほしいんやけどな」
ソーダ「どないしたん」
ミント「ゆうべ、めっちゃ変な夢見てん。口の中のガムがな、噛んでも噛んでも、どんどん増えていく夢」
ソーダ「あー、それ、よう聞くやつやな」
ミント「取っても取っても出てくんねん。引っ張ったら、びよーんて伸びて、気づいたら口から床まで、ガムの橋がかかってた」
ソーダ「そんな橋、誰も渡りたないわ」
ミント「しゃあないから、そのガムで縄跳びしたった」
ソーダ「前向きすぎるやろ! 普通、夢の中で焦るとこやで」
ミント「ほんで、これ何の意味なんやろって思って」
ソーダ「夢占いではな、口の中のガムが取れへん夢は、頭から離れへん悩みとか、言いたいこと言えずにため込んでる状態を表すらしいで」
ミント「え、そうなん」
ソーダ「そうや。口は、言葉を出すところやからな。言いたいことが喉につかえてると、ガムがねばねばーっと増えてくんねん」
ミント「ほな、ガムを飲み込んでもうたらどうなるん」
ソーダ「人の言うこと、よう確かめんと鵜呑みにしてまう注意やって」
ミント「なるほどな。ほな、ガムを踏んでまう夢は」
ソーダ「他人のトラブルに巻き込まれる暗示や」
ミント「ほな、ガムの包み紙だけ食べる夢は」
ソーダ「それはただのヤギや!」
ミント「メェー」
ソーダ「鳴かんでええねん」
ミント「でもな、ガムってすごいんやで。昔はマヤの人らが、木の樹液を固めたチクルっちゅうもんを噛んでたんやて」
ソーダ「急に博識やな」
ミント「ほんで、シンガポールでは、ガムの販売が禁止されてるんやて」
ソーダ「知ってる知ってる。吐き捨てたガムで、駅の扉が閉まらんようになったりしたらしいな」
ミント「せやから俺、シンガポール行ったら、口の中のガム、どないしたらええんやろ」
ソーダ「持ち込まんかったらええだけの話や!」
ミント「夢の中のガムでもあかんかな」
ソーダ「夢は税関通らへんから大丈夫や」
ミント「よかったー」
ソーダ「……いや、ちょっと待って。夢の中で、ほかに何かなかったん」
ミント「ほかに?」
ソーダ「ガムの味とか」
ミント「あー……それがな、全然、味がせえへんかってん」
ソーダ「味のないガムを、ずっと噛み続けてたんか」
ミント「うん」
ソーダ「それはな、単調な毎日に飽きてる、ちゅう意味らしいで」
ミント「……」
ソーダ「ミント?」
ミント「……実はな。言おうかどうか、ずっと迷ってたことがあんねん」
ソーダ「え、急にどないしたん。解散とか言わんといてや」
ミント「ちゃうちゃう。ちゃうねん」
ソーダ「ほな何やねん」
ミント「うちらの、この『ガム噛みながらしゃべるネタ』な」
ソーダ「うん」
ミント「もう、三年やってるやろ」
ソーダ「……やってるな」
ミント「正直、味、なくなってきてると思うねん」
ソーダ「言うたー!」
ミント「言いたかってん! ずっと言いたかってん! せやから、口の中でガムが増えてってん!」
ソーダ「そういうことかいな!」
ミント「言えてすっきりしたわ。ほら見て、口の中、もう何もあらへん」
ソーダ「ほんまや。ガムもあらへん」
ミント「あ、ガムは今、緊張して飲み込んでもうた」
ソーダ「ほな鵜呑みにしてまうやつやないか!」
ミント「ほな、新しいネタ、一緒に考えてくれる?」
ソーダ「……まあ、ええよ。ほんまは俺も、ちょっと飽きてた」
ミント「言えや!」
ソーダ「お前もガム増えてたんちゃうか、って今気づいたわ」
ミント「ほな、二人でガム、出しにいこか」
ソーダ「新しい味、探しにいこ」
ミント「次はミント味でいこか」
ソーダ「お前の名前やないか! もうええわ!」
二人「どうも、ありがとうございましたー!」
(その晩、ミントは、口の中のガムがすっと溶けてなくなる夢を見た。ほんのり、新しい味がした気がした)
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ガムの夢が持つ本来の意味についてはこちらの夢占い記事で、フロイトの口唇期や、マヤのチクル、シンガポールのガム事情についてはこちらの夢ことほぎ記事で、それぞれ詳しく解説しています。

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