【夢ことほぎ】気持ち悪い虫の夢の心理学的意味|由来・背景

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【夢ことほぎ】気持ち悪い虫の夢の心理学的意味|由来・背景

気持ち悪い虫の夢が持つ基本的な意味や、虫の種類・場面ごとの読み解き方は、こちらの夢占い記事にまとめています。

ここで見つめたいのは、人が虫に感じる「ぞわっ」という感覚と、その感覚との付き合い方です。

なぜ人は、小さな虫をこれほど怖がり、気味悪く思うのか。そして、その苦手は、どうすればほどけていくのか。虫の研究者が体験した恐怖や、苦手を克服する治療の研究、さらに、腹の中の虫を描いた戦国時代の医学書や、田んぼの虫を村の外へ送り出す行事、そしてカフカの小説をめぐる話から、気持ち悪い虫の夢の奥をたどっていきます。

虫の研究者が、虫に襲われた日

アメリカのワイオミング大学で、草原のバッタを研究していた昆虫学者ジェフリー・ロックウッドは、1998年の夏、思いがけない体験をしました。

調査のために、バッタが大量に集まっている谷へ足を踏み入れたとき、無数のバッタが、彼の体にいっせいに群がってきたのです。顔にも、服のすき間にも、バッタがぶつかってきます。

長年、虫を研究してきたロックウッドが、そのとき初めて、恐怖でわれを失いました。気づけば谷を逃げ出し、車の中で、震えながら呼吸を整えていたといいます。

この体験をきっかけに、ロックウッドは、人が虫に抱く恐怖や嫌悪そのものを見つめるようになり、のちに、そのことを一冊の本にまとめました。

虫を誰よりよく知る人でさえ、条件がそろえば、体が勝手にすくんでしまう。虫への気持ち悪さは、知識や意志の強さとは別のところで、体に組みこまれた反応なのです。

少しずつ近づけば、苦手はほどける

スウェーデンの心理学者ラーシュ=ヨーラン・エストは、1989年に、クモなどへの強い恐怖を、たった一回の治療でやわらげる方法を発表しました。

治療の時間は、長くてもおよそ三時間。治療者がまず手本を見せ、患者はそれにならいながら、たとえば離れた場所から虫を眺める、容器ごと近づく、というように、ほんの少しずつ距離を縮めていきます。

怖さが落ち着くのを待ってから次へ進むので、無理やり押しつけられることはありません。この方法は、のちに多くの研究で効果が確かめられ、恐怖症の治療法のひとつとして、いまも広く用いられています。

苦手なものから逃げ続けていると、その苦手は、頭の中でどんどん大きくなっていきます。反対に、自分で選んだ小さな一歩を重ねていけば、体は少しずつ「これは大丈夫」と覚えなおしていくのです。

気持ち悪さは、なくさなくていい

ロックウッドの体験は、虫への気持ち悪さが、意志や知識ではどうにもならない、体の反応であることを教えてくれます。そしてエストの治療法は、その反応も、自分のペースで近づいていけば、少しずつ落ち着いていくことを示しました。

気持ち悪い虫の夢を見たら、まず、いまの暮らしの中で、体がこわばるほど苦手に感じているものは何かを、思い浮かべてみてください。

次に、その苦手から、ただ逃げ続けていないかを。

そして、いきなり立ち向かうのではなく、今日できる、いちばん小さな一歩は何かを、考えてみましょう。

腹の中にすむ、愛嬌のある虫たち

福岡県の九州国立博物館には、戦国時代の永禄十一年(1568年)にまとめられた、『針聞書(はりききがき)』という医学書が所蔵されています。

この本には、人の体の中にすみつき、病気や体の不調を引き起こすと考えられていた、さまざまな「腹の虫」の姿が描かれています。

ところが、その姿は、どこか気味が悪いというより、ずいぶん愛嬌があります。馬や牛のような形の虫、人の顔をもつ虫、トカゲやヘビに似た虫。当時の人々が、目に見えない不調の原因を、想像力をふくらませて描いたものでした。

いまでは、この虫たちは、博物館のキャラクター「はらのむし」として、グッズになるほど親しまれています。

正体のわからない不安も、形と名前を与えてしまえば、少しだけ付き合いやすくなる。昔の人々は、そのことを知っていたのかもしれません。

田んぼの虫を、村の外へ送り出す

日本の各地には、夏の夜、たいまつをともし、鉦や太鼓をにぎやかに鳴らしながら、田んぼの害虫を村の外へ送り出す「虫送り」という行事が伝わっています。

行列の先頭には、「実盛(さねもり)」と呼ばれるわら人形が担がれることがあります。平安時代の終わりの武将、斎藤実盛は、戦の中で、乗っていた馬が稲の株に足をとられて倒れ、討ちとられてしまったといわれます。その無念が害虫となって稲を荒らすようになったと考えられ、人々は、実盛の霊をなぐさめながら、虫を村境まで送ったのです。

虫送りは、虫を憎んで退治するための行事ではありません。災いをもたらすものを、なだめ、ていねいに外へ送り出す。そこには、厄介なものとの、昔ながらの付き合い方が表れています。

カフカが「描かないで」と頼んだ虫

プラハ生まれの作家フランツ・カフカの小説『変身』は、ある朝、主人公のグレゴール・ザムザが、自分が巨大な虫に変わっていることに気づく場面から始まります。

1915年、この小説が一冊の本として出版されることになったとき、カフカは出版社に手紙を書き、表紙に、虫そのものを描かないでほしいと頼みました。遠くからでさえ、見せてはならない、と。

実際に出来上がった本の表紙には、虫ではなく、両手で顔を覆う男性の姿が描かれました。

その虫が、どんな姿をしていたのか。読者は、それぞれの心の中で、思い思いの「気持ち悪い虫」を思い描くことになります。目に見えない分だけ、それは、読む人自身がいちばん恐れているものの姿になっていくのです。

気持ち悪い虫の夢が伝えているもの

虫の専門家さえ、われを失わせるほどの、体に組みこまれた反応。そして、その反応も、小さな一歩を重ねれば、少しずつほどけていくこと。

形と名前を与えられ、親しまれるようになった腹の虫。災いを、なだめながら村の外へ送り出した虫送り。そして、描かれなかったからこそ、読む人の恐れを映し出すカフカの虫。

気持ち悪い虫の夢は、あなたが苦手としているものの姿を、そっと形にして見せながら、それとどう付き合っていくかを、問いかけているのでしょう。

ここまでの内容をもとに、虫がさわれずに悩んでいた女性が、師匠の置いた虫かごで青虫が蝶になるのを見届け、虫送りの夜に、自分の中の気がかりをていねいに送り出していくまでを描いた創作ストーリーは、こちらの夢物語で読むことができます。

よくある質問

夢の中で、自分の手足が虫に変わっていきました。

腕に節が生まれ、指が細い脚に変わっていく。そんな夢は、自分の中の「虫が好かない」部分が、はっきり形をとりはじめたことを映しています。

周りに合わせて飲みこんだ言葉や、人には見せない癖を、最近、もてあましていないでしょうか。

『変身』のグレゴールは、虫になったあとも、家族の暮らしを心配し続けました。姿が変わっても、中身のやさしさは消えなかったのです。夢の中の変身も、あなたが嫌う一面と、あなたの本質とは別ものだと教えています。気になる癖をひとつ選び、紙の上でそっと名前をつけてみてください。

虫嫌いを、少しでも克服したいと思っています。

エストの治療法が示すように、苦手なものとの距離は、自分で選んだ小さな一歩を重ねることで、少しずつ縮めていくことができます。

たとえば、虫の写真を数秒だけ見る、図鑑の絵を眺める、窓ごしに庭の虫を観察する。そうした、怖くない範囲の一歩から始めてみてください。

ただし、無理に克服しなくても、暮らしに困らないなら、それで十分です。日常生活に支障が出るほどの強い恐怖がある場合は、専門の医療機関に相談する方法もあります。

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