【夢物語】狐火の道|狐の夢

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夢占い 狐

気づくと、見慣れない夜道を歩いていた。

久しぶりに会う約束をしていた人がいて、その時間に遅れそうで、息が切れていた。
いつもの近道のはずなのに、街灯もまばらな、田んぼのあぜ道のような小道に迷い込んでいる。土と夜露のにおいが、やけに生々しく鼻をかすめた。

前方に、小さな灯りがふわりと浮かんでいた。提灯でも懐中電灯でもない、青白い、頼りない光――狐火、と頭のどこかで思った。その光のそばに、一匹の狐がちょこんと座っていた。

驚くよりも先に、なぜか懐かしさに似たものを覚えた。狐は私をひと目見ると、くるりと背を向け、灯りの方向へ歩き出した。ついてこい、というふうに。

こっちじゃない。頭ではそう思いながらも、足は勝手に狐のあとを追っていた。
焦る気持ちとは裏腹に、狐の歩みはのんびりとしていて、まるでこちらをからかっているようにも見えた。

道はどんどん逸れていく。約束の場所とは正反対の方向へ連れて行かれているはずだった。
化かされている――何度もそう思った。途中、細い川にかかる橋の手前で、狐がふと足を止め、こちらを振り返ったことがあった。
渡るか、戻るか。

そう問われている気がして、私はしばらく立ち尽くした。

結局、私は橋を渡った。狐の背中を追うことを、まだやめられなかったから。

草むらの向こうで、虫の声がやけに大きく響いていた。狐火は、まるで息をするように、ふっと弱まってはまた強くなる。その頼りない光を頼りに、私はただ足を進め続けた。

やがて狐は、小さな社の前で足を止めた。鳥居の赤が、狐火に照らされていつもより深い色に見える。狐はそこで初めて、こちらを振り返った。

その目には、いたずらっぽさと、何かを試すような静けさが同居していた。

ふと、社の脇に立てかけられた古い立て札が目に入った。かすれた文字で、私が進もうとしていた「近道」は、数年前の工事で行き止まりになっていると書かれている。

あのまま真っ直ぐ進んでいたら、暗い中でどうにもならなくなっていたはずだ。

膝から力が抜けそうになった。狐は、私を惑わせていたのではなかった。遠回りに見えた道こそが、唯一、通り抜けられる道だったのだ。もし真っ直ぐに突き進んでいたら、私は暗闇の中で立ち往生し、約束の時間になっても、結局そこにたどり着けなかっただろう。

顔を上げたときには、狐の姿はどこにもなかった。青白い灯りだけが、社の奥へすうっと吸い込まれるように消えていく。あたりに残るのは、虫の声と、自分の呼吸の音だけだった。

社に小さく手を合わせてから、目が覚めた。

カーテンの隙間から、いつも通りの朝の光が差し込んでいる。夢の中の焦りが嘘のように、胸の中は静かだった。

今日会う予定の相手のことを、少しだけ思い浮かべる。このところ、伝えるべきかどうか迷っていた話があった。遠回りに思えても、まずはそのまま話してみようと、なぜか素直にそう思えた。

化かされた、とばかり思っていたけれど。

あの狐は、私が思っていたよりずっと律儀に、道を教えてくれていたのかもしれない。

橋の手前で足を止めたあの一瞬も、いま思えば、無理に押しつけるのではなく、選ばせてくれていたのだろう。

渡るかどうかを決めたのは、結局のところ私自身だった。


今日、誰かの言葉や行動に「化かされた」と感じることがあったら、その先に何があるのか、少しだけ確かめてから判断してみようと思う。


anima
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 こちらは、狐の夢を見た人が、その夢の余韻をもう一度味わえるように短編としてご用意しました。
 遠回りに見える道こそ、案外いちばんの近道だったりするものよ。



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