【夢物語】さかさまの言葉|彼女と喧嘩する夢

この記事は約2分で読めます。
【夢物語】さかさまの言葉|彼女と喧嘩する夢

「もう知らない!」

彼女の声が、部屋の空気を切り裂いた。約束していた記念日を、僕がうっかり忘れていたことがきっかけだった。売り言葉に買い言葉で、気づけば互いに、言わなくてもいいことまで口にしていた。

「そういうところ、本当に無神経だと思う」

彼女がそう叫んだ、次の瞬間だった。僕の耳の奥に、彼女の声とは違う、もう一つの声が、そっと重なって聞こえた。

――本当は、傷つけられるくらい大事にされたい。

聞き間違いかと思った。だが彼女が次の言葉を発したとき、また同じことが起きた。

「もう、あなたのことなんて信じられない」

――本当は、誰よりも信じたいから、怖くなる。

僕は言葉を失ったまま、彼女を見つめた。怒りに満ちた表情の奥で、彼女の目が、かすかに揺れている気がした。

「なんで、そんな顔をするの」

「いや……今、なんて言った?」

「だから、信じられないって」

やはり、彼女自身には、あの重なる声は聞こえていないらしい。夢の中だからこそ聞こえる、言葉の裏側なのかもしれない。僕はおそるおそる、口を開いた。

「本当は、誰よりも信じたいから、怖くなる……ってこと?」

彼女の動きが、ぴたりと止まった。

「なんで、それを」

「なんとなく、そんな気がしただけ」

彼女は少しの沈黙のあと、崩れるように肩を落とした。

「そうだよ。忘れられたことが悲しかったんじゃなくて、大事にされてないんじゃないかって、不安になっただけ。それを、うまく言えなくて」

さっきまでの怒りの言葉が、すべて裏返しになって、僕の中に流れ込んでくるようだった。「もう知らない」は「まだ知りたい」で、「信じられない」は「信じたい」。彼女がぶつけてきた言葉は、どれも本当の気持ちを、裏返しにしたものだったのかもしれない。

「ごめん。記念日、ちゃんと覚えておくべきだった」

「うん。……でも、今、ちゃんと気づいてくれたから、いいよ」

彼女は少しだけ笑った。その笑顔に、さっきまでの怒りの気配はもう残っていなかった。

目が覚めると、隣で眠る彼女の寝顔があった。夢の中の言い争いのことを思い出しながら、僕はそっと呟いた。

「怒っている言葉ほど、裏側に本当の気持ちが隠れているのかもしれないな」

その日の帰り、僕は花を一輪買って帰った。理由は聞かれなかったけれど、彼女は少しだけ驚いた顔をして、それから、いつもより長く微笑んでいた。

こちらもオススメ

彼女と喧嘩する夢が持つ本来の意味についてはこちらの夢占い記事で、逆夢の由来やゴットマンの研究についてはこちらの夢ことほぎ記事で、それぞれ詳しく解説しています。

コメント

タイトルとURLをコピーしました