【夢物語】遅れてくれた道連れ|亀の夢

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夢占い ウミガメ

約束の時間に遅れそうで、私は浜辺の道を急いでいた。

潮の匂いが強くなるほど焦りも増していく。走りたいのに、足元は柔らかい砂に取られて、思うように進めない。腕時計を確認するたび、針は容赦なく進んでいるように見えた。
そのとき、進行方向の真ん中に、大きな亀が一匹、のっそりと座り込んでいるのが見えた。

どいて、と声をかけそうになって、やめた。亀は驚いたふうもなく、こちらをじっと見ている。まるで、急いでいるのは知っている、それでも少し待って、とでも言うように。
甲羅には、長い年月をくぐり抜けてきたのだろう、細かな傷や模様がいくつも刻まれていた。

仕方なく、私は亀の脇をすり抜けようと大きく回り込んだ。すると亀も、ゆっくりと、しかし確実に私の進路をふさぐように体の向きを変える。
右に避ければ右へ、左に踏み出せば左へ。まるで、通せんぼを楽しんでいるようにさえ見えて、私は思わず声をあげて笑いそうになった。苛立っていたはずなのに、いつのまにか、その仕草がどこか愛おしく感じられてくる。

何度か繰り返すうちに、私は苛立ちよりも不思議さのほうが勝ってきた。この亀は、私を止めたいのではなく、私をどこかへ導こうとしているのではないか。
そう思った瞬間、体から力がふっと抜けた。

試しに、亀の歩く速さに合わせてみることにした。
一歩、また一歩。急いでいたときには見えなかった、波打ち際の光の揺らぎや、貝殻の模様、風に運ばれてくる潮騒の合間の静けさが、やけにはっきりと目に入ってくる。
不思議と、焦りが少しずつ薄れていった。時間の流れそのものが、さっきまでとは違う速さで進んでいるようだった。

しばらく歩くと、亀は岩場の手前でぴたりと止まった。
見ると、さっきまで私が走ろうとしていた砂浜の先が、大きく崩れている。満ちてきた潮に足元をすくわれて、崖のように切れ落ちていたのだ。もし急いだまま突っ切っていたら、私は気づかずに踏み外していただろう。
背筋がひやりとした。同時に、安堵の息が漏れた。

亀は何も言わず、ただゆっくりと甲羅を上下させて息をしている。
ああ、そうか。私を止めていたのではなく、間に合わせてくれていたのだ。遅れることを心配していたのに、本当はこの亀のペースこそが、私を無事に運ぶための、いちばん正しい速さだったのかもしれない。

振り返ると、崩れた砂浜の向こうに、遠回りだけれど確かな道が続いているのが見えた。亀は先に立って、その道をゆっくりと歩き出す。
私はもう、時計を気にすることをやめて、その背中についていくことにした。

不思議なことに、遠回りのはずのその道を歩いているあいだ、待ち合わせの相手のことも、時間のことも、少しも気にならなかった。急いでいたときには一分一秒が惜しく感じられたのに、亀の速さに合わせて歩くうちに、まるで時間そのものが、私に合わせてゆっくりと流れ直してくれているようだった。

気づけば、目が覚めていた。
カーテンの隙間から差し込む朝の光は、いつもよりやわらかく見えた。
今日も、きっと予定通りにはいかないことがあるだろう。それでも、急がなくていい。自分のペースで進んだ先にこそ、ちゃんと守られている道がある。そんな気がした。


anima
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 急いでいる人ほど、遅いものに苛立つものよ。でもね、世界を背負うくらいの亀だもの、あなたを間に合わせることくらい、わけないの。


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